卸価格の交渉は、数字の押し付け合いになりがちです。しかし小売価格から逆算する共通の枠組みを持てば、双方が納得できる設計が可能になります。
価格の階層を可視化する
まず、価格がどの段階でどれだけ乗るかを整理します。
- 自社の出荷価格(FOB/EXW)
- + 輸送費・保険
- + 関税・輸入諸税
- = 輸入者の仕入原価
- + 輸入者・代理店のマージン
- = 小売への卸価格
- + 小売マージン
- = 店頭価格
この階層を相手と共有することが交渉の出発点です。どこが不透明なままだと、条件の妥当性を議論できません。
マージンが厚くなる条件
代理店のマージンは、負担するリスクと業務量に比例します。
| 要素 | マージンへの影響 |
|---|---|
| 在庫を持つ | 厚くなる(在庫リスクの対価) |
| 販促を負担する | 厚くなる(投資の回収が必要) |
| 登録を代行する | 厚くなる(費用と手間の対価) |
| 配荷を自社で行う | 厚くなる(営業コスト) |
| 二次卸を経由する | 厚くなる(段階が増える) |
| 前払いで買い取る | 厚くなる(資金負担) |
マージンを削るのではなく、役割を変える
価格が合わないとき、マージンを削るのは悪手です。代わりに役割を変えることを検討してください。
- 販促費を自社が持つ:その分、代理店マージンの引き下げを求める
- 在庫リスクを自社が持つ:委託販売にして、マージンを下げる
- 二次卸を飛ばす:直接小売と取引する構造にする
- 物流を自社が手配する:現地倉庫まで自社で運ぶ
マージンは役割の対価です。役割を変えずに金額だけ下げると、必ず実行が伴わなくなります。
価格表を作る
複数市場に展開すると、価格の整合が保てなくなります。市場ごとにゼロから交渉するのではなく、共通の算式から導出するべきです。
- 基準となる出荷価格を決める
- 市場ごとの関税率と輸送費を反映する
- 想定する代理店マージンの幅を決める(範囲で持つ)
- 想定小売価格を算出し、現地の競合価格と比較する
- 成立しない市場は、仕様変更かチャネル変更で調整する
この表があると、新しい市場の交渉が格段に速くなります。相場観を持った状態で臨めるためです。
価格を守ることの重要性
交渉の中で最も守るべきは、出荷価格の下限です。
一度下げた価格は戻せません。しかも他市場の代理店に知られると、同じ条件を要求されます。市場ごとに価格が違うこと自体は珍しくありませんが、合理的な理由(数量、条件、通貨)で説明できる差である必要があります。
説明できない値引きは、必ず後で問題になります。