海外取引で最も実損に直結するのが、回収できないことと為替で目減りすることです。契約時の条件設計で、リスクの大半はコントロールできます。
支払条件の選択肢
| 条件 | 内容 | リスク |
|---|---|---|
| 全額前払い | 出荷前に全額受領 | 自社リスクなし。相手が受け入れにくい |
| 一部前払い | 一部を前払い、残りを出荷後 | 実務上の落としどころ |
| 信用状(L/C) | 銀行が支払いを保証 | 安全だが手続きと費用がかかる |
| 出荷後一定期間 | 船積み後◯日以内に支払い | 回収リスクを自社が負う |
| 検収後 | 相手が受領・検収してから支払い | リスクが最も高い |
初回取引の原則初回取引は前払いまたは一部前払いが原則です。実績を重ねてから条件を緩めるのが順序であり、最初から後払いに応じる必要はありません。
与信をどう判断するか
相手の支払能力を判断する材料は限られますが、確認できることはあります。
- 登記情報(設立年、資本金)
- 取引銀行と、銀行からの照会
- 既存の取引ブランド(日本メーカーがいれば、支払状況を聞ける場合がある)
- 貿易保険の引受可否(引受不可なら、それ自体が判断材料)
- 取引信用調査会社のレポート
貿易保険の引受可否は、簡便で有効な指標です。専門機関が与信判断をしていることになります。
通貨をどうするか
決済通貨の選択は、為替リスクを誰が負うかの決定です。
- 円建て:自社は為替リスクなし。相手が負う。相手は嫌がる
- 米ドル建て:実務上の標準。双方がリスクを負う。多くの市場で受け入れられる
- 現地通貨建て:相手はリスクなし。自社が全部負う。避けるべき
米ドル建てが最も一般的な落としどころです。ただし円安・円高の局面で採算が変わるため、価格改定の条項が必要です。
価格改定条項を入れる
長期の契約では、為替と原価の変動に対応する条項が不可欠です。
- 改定のタイミング:年1回、または半年ごと
- 改定の基準:一定以上の為替変動、原材料費の上昇
- 通知の期間:改定の何か月前に通知するか
- 既存の受注分の扱い:改定前の注文をどう扱うか
この条項がないと、価格を上げられません。原価が上がっても、契約価格に縛られて赤字で供給し続けることになります。
実務上の落としどころ
典型的な着地点は次のようになります。
- 初回:全額前払い、米ドル建て
- 2〜3回目:一部前払い(30〜50%)+出荷後残金
- 実績が安定したら:出荷後一定期間内の支払い
- 取引規模が大きくなったら:信用状または貿易保険の付保
段階的に緩めていくのが原則です。最初から緩い条件にすると、後から締めることはできません。