海外展開で最もコストが高い事象は、失敗ではありません。失敗が判明するのが遅いことです。同じ問題でも、いつ分かるかによって失うものが桁違いに変わります。
同じ問題、違うコスト
「この成分は使えない」という同じ事実が、判明のタイミングによってどう変わるか。
| 判明のタイミング | 失うもの |
|---|---|
| 市場選定の段階 | 候補から外すだけ。ほぼ損失なし |
| 代理店交渉の前 | 調査時間の一部 |
| 代理店契約後 | 交渉に費やした数か月。相手の信頼 |
| 登録申請後 | 申請費用、書類作成の工数、数か月 |
| 初回発注後 | 生産した在庫、輸送費、機会損失 |
同じ事実の判明が数か月遅れるだけで、損失は数十倍になります。
前倒しすべき5つの検証
次の5項目は、市場選定と同時に検証すべきです。後回しにすると、必ず高くつきます。
- 成分の可否:現行処方でその市場に出せるか
- カテゴリ分類:現地でどの区分になり、どの手続きが必要か
- 価格の成立:現地小売価格から逆算して卸価格が成立するか
- 賞味期限・保管条件:物流に耐えるか(食品・要冷蔵品)
- 証明書の取得可否:自由販売証明書、GMP証明を取れるか
なぜ後回しにされるのか
これらの検証が後回しにされる理由は、心理的なものです。
- 前向きな作業(市場調査、パートナー探し)のほうが楽しい
- 規制の確認は面倒で、専門知識が要る
- 「たぶん大丈夫だろう」という楽観
- 確認するとダメだと分かるかもしれない、という無意識の回避
最後の項目が本質かもしれません。検証は、計画を否定する可能性を持つため、無意識に先送りされます。
検証を前倒しする仕組み
意志の力ではなく、順序を固定することで解決します。
- 市場候補を挙げた時点で、5項目の検証をセットで行う
- 検証が完了していない市場は、次のフェーズに進めない
- 「要対応」が出た場合、対応の重さ(期間とコスト)まで確定させる
- その上で、市場を絞る
フェーズの通過条件に検証を組み込むことで、意志に頼らずに前倒しできます。
早く失敗することの価値
検証の目的は、うまくいくことの確認ではありません。ダメなものを早く見つけることです。
市場選定の段階で3市場が「不可」と判明したら、それは成果です。その3市場に費やすはずだった数か月が、残りの市場に回せます。
早く分かった悪いニュースは、遅く分かった良いニュースより価値がある。