海外展開のプロジェクトには、失敗とは別の終わり方があります。漂流です。中止もされず、進みもせず、担当者だけが定期的に報告を続ける状態。これは失敗より始末が悪い。
漂流に入る4つの条件
- 終了条件がない:いつまでに何ができていれば次に進むかが決まっていない
- 成果が見えない期間が長い:登録待ち、書類待ちで数か月動きがない
- 判断者が不在:誰が決めるのかが曖昧で、決定が先送りされる
- 撤退基準がない:止める理由がないので、惰性で続く
4つが揃うと、プロジェクトは確実に漂流します。いずれも計画段階で防げるものばかりです。
「登録待ち」が最も危険な期間
製品登録の申請から承認までの数か月は、動きがなく、成果も出ません。この期間にプロジェクトが漂流に入るケースが最も多い。
- 担当者が他業務に戻り、優先度が下がる
- 社内の関心が薄れ、進捗を聞く人がいなくなる
- 経営が別の課題に移り、予算が削られる
- 再開しようとしたときに、文脈が失われている
判断者を明示する
漂流の原因として最も多いのが、誰が決めるのかが曖昧なことです。
| 判断事項 | 誰が決めるべきか |
|---|---|
| どの市場に参入するか | 事業責任者・経営 |
| 処方変更に投資するか | 事業責任者+開発 |
| どの代理店と組むか | 事業責任者 |
| 契約条件を受けるか | 事業責任者+法務 |
| 価格をいくらにするか | 事業責任者+経理 |
| 撤退するか | 経営 |
プロジェクト開始時に、この表を埋めておくだけで、判断の先送りが大幅に減ります。
漂流から抜ける方法
すでに漂流している場合、抜ける方法は限られています。
- 現在地を確定させる:何が終わっていて、何が残っているかを一覧化する
- 残作業を洗い出す:残っているタスクと、それぞれの所要時間を出す
- 期限を切る:いつまでに何をするかを決め、経営と合意する
- 撤退基準を設定する:その期限で達成できなければ止める、と決める
- 報告のリズムを作る:月次で進捗と課題を共有する
4番目が最も重要です。止める条件を決めることで、続ける条件も明確になります。
漂流を許さない設計
そもそも漂流させないための設計は、フェーズを切ることに尽きます。
参入準備・参入直前・参入後。それぞれに終了条件と期限を置き、その時点で判断する。フェーズの通過判定があれば、漂流は構造的に起きません。止まる場所を先に作ることが、進み続けるための条件です。