海外展開が止まる原因は、社外だけにあるわけではありません。社内の合意形成で止まるケースは、外部要因と同じくらい頻繁に起きます。
部門ごとに、止める理由が違う
| 部門 | 懸念 | 必要な材料 |
|---|---|---|
| 経営 | 投資対効果が読めない | 市場の比較、想定売上、投資額と回収期間 |
| 品質保証・薬事 | 規制違反のリスク | 市場別の規制要件、確認済みの範囲、残るリスク |
| 製造 | 小ロット対応の負担 | 想定数量、仕様変更の範囲、生産計画への影響 |
| 営業 | 国内への影響(並行輸入、価格) | 価格政策、チャネルの棲み分け |
| 経理・財務 | 為替リスク、回収リスク | 支払条件、通貨、与信の考え方 |
それぞれの懸念は正当です。海外展開の担当者が「反対されている」と感じるとき、多くは判断材料が足りていないだけです。
経営を動かす材料
経営が判断できないのは、選択肢が比較の形になっていないためです。
- 複数市場を同じ基準で比較した表(需要・競合・規制・コスト)
- なぜこの市場を推すのかの根拠
- 想定される投資額の内訳(登録費用、在庫、販促、渡航)
- 結果を判断する時期と、その時点で見る指標
- うまくいかなかった場合の撤退条件
品質保証部門を、早く巻き込む
最も巻き込みが遅れがちで、最も影響が大きいのが品質保証・薬事部門です。
- 成分表の正確な情報を持っているのはこの部門
- 取得済みの証明書の有無を知っているのもこの部門
- 製造委託先とのやりとりの窓口であることが多い
- 規制上のリスクを最終的に判断する立場
市場選定の段階から巻き込むべきです。後から巻き込むと、「そんな成分では出せない」という指摘で計画が崩れます。
営業部門の懸念に応える
国内営業部門が海外展開に消極的になる理由は、たいてい次のどちらかです。
- 並行輸入への懸念:海外で安く売られ、国内に逆流するのではないか
- 価格の可視化:海外価格が知られ、国内価格への説明が難しくなるのではないか
これらは価格政策で応えられます。海外価格を国内より安く設定しないという原則を明示し、チャネルごとの価格政策を文書化しておけば、懸念の大半は解消します。
合意形成そのものを工程として扱う
社内調整は、海外展開の「準備」ではなく工程そのものです。時間を確保し、必要な材料を用意し、順序を設計すべきものです。
- 誰の承認が必要かを、最初に洗い出す
- 各部門が何を懸念するかを、事前に想定する
- その懸念に応える材料を、提案と同時に用意する
- 順序を設計する(品質保証の確認 → 経営提案、という順序が有効なことが多い)
「まず経営に提案して、承認されてから詳細を詰める」という順序は、多くの場合失敗します。詳細が詰まっていないと、経営は判断できないためです。