「海外展開に時間が取られる」と言うとき、実際には何に時間を使っているのか。工程別に分解すると、削れる時間と削れない時間がはっきり分かれます。
作業を4つに分類する
海外展開の実務は、性質の違う4種類の作業でできています。
| 分類 | 内容 | 代替可能性 |
|---|---|---|
| 調べる | 規制、市場、競合、候補企業の情報収集 | 高い |
| まとめる | 比較表、資料、書類の作成 | 高い |
| 待つ・追う | 返事待ち、進捗確認、期限管理 | 高い |
| 決める・交渉する | 市場選定、条件合意、関係構築 | 低い |
上3つは代替可能で、4つ目は人にしかできません。問題は、実際の時間配分が上3つに偏っていることです。
典型的な時間配分
兼務担当者の1か月を分解すると、おおよそ次のようになります。
- 調べる:規制の確認、市場の情報収集、候補企業の調査
- まとめる:社内報告資料、比較表、英文資料の作成
- 待つ・追う:メールの往復、進捗確認、催促
- 決める・交渉する:会議、パートナーとの商談
見えていないコスト
上記に加えて、集計されないコストがあります。
- 再起動コスト:中断後に文脈を思い出す時間
- 探索コスト:前に調べた情報がどこにあるか探す時間
- 重複コスト:同じことを別の場面で調べ直す時間
- 手戻りコスト:後から判明した情報で、やり直す時間
これらは工数として記録されないため、存在しないことになっています。しかし実際には、相当な割合を占めます。
何を削れるか
削減の優先順位は明確です。
| 対象 | 削減方法 | 効果 |
|---|---|---|
| 調べる | 工程を持ったエージェントに任せる | 大きい |
| まとめる | 比較の型を固定し、自動で整形する | 大きい |
| 待つ・追う | 進捗を自動で追跡し、遅延を検知する | 中 |
| 再起動・探索 | 情報を一箇所に集約し、状態を保持する | 大きい |
| 手戻り | 確認項目を事前に持ち、早期に検証する | 非常に大きい |
最後の手戻りの削減が、効果としては最大です。1回の手戻りが数か月を消すため、これを1回防ぐだけで他のすべての改善を上回ります。
削減の目的は、時間を戻すこと
往復を削減する目的は、コスト削減ではありません。削減した時間を、決める・交渉するに戻すことです。
海外展開の成否を分けるのは、調査の丁寧さではなく、市場の選択とパートナーとの関係です。ここに時間を使えているかどうかが、結果を決めます。
調べる時間を減らして、決める時間を増やす。これが往復削減の本当の目的です。