代理店との交渉で必ず出てくるのが独占権です。相手の主張には正当性があり、頭から拒否するのは得策ではありません。しかし無条件の独占は、最も危険な契約条件です。
相手が独占を求める理由
独占の要求は、わがままではなく合理的な理由に基づきます。
- 製品登録の費用と手間を負担する
- 販促に投資する必要がある
- 小売への提案活動にコストがかかる
- 市場を育てても、他社に横取りされては投資回収できない
相手の投資を保護する仕組みとして、独占には合理性があります。問題は、投資しない相手にも独占が渡ってしまうことです。
独占とセットにすべき4条件
- 期間を区切る:初回は1年。実績を見て更新する。3年以上の独占は避ける
- 最低購入量を定める:年間の数量または金額。未達なら独占が解除される
- 範囲を限定する:国か、チャネルか、カテゴリか。すべてを渡さない
- 解除条件を明記する:どうなれば解除できるかを、事前に書く
範囲の限定のしかた
「国全体の独占」を渡す必要はありません。範囲を切る方法は複数あります。
| 切り方 | 内容 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 地域 | 国内の特定地域に限定する | 国土が広い市場 |
| チャネル | 実店舗のみ/ECのみ/業務用のみ | チャネルごとに強みが違う相手がいる |
| カテゴリ | 特定の製品ラインのみ | 製品ラインが複数ある場合 |
| 期間 | 初年度のみ独占、以降は実績次第 | 最も使いやすい |
チャネルで切るのは実務的に有効です。実店舗に強い相手とECに強い相手を分ける、業務用と小売を分ける、といった設計ができます。
独占を与えない選択
独占を与えずに始める方法もあります。
- 非独占で始め、実績が出たら独占を検討する:最も健全。相手が納得すれば最良
- 優先交渉権を与える:他社と組む前に、まず相手に相談する義務を負う
- 事実上の独占:契約上は非独占だが、他社を入れない運用にする
3番目は、相手からすると保証がないため受け入れられにくい。ただし信頼関係ができている場合には成立します。
最悪のシナリオを想定する
独占を与える判断をするときは、次のシナリオを想定してください。
- 契約後、相手が何も動かない
- 連絡が減り、販促も行われない
- 契約期間中、他社と組むことができない
- その市場が数年間、完全に止まる
- 製品登録が相手名義なら、契約終了後も再参入に時間がかかる
このシナリオが起きても大丈夫な条件になっているか。これが独占を判断する唯一の基準です。最低購入量と解除条件があれば、被害は1年で止められます。