「海外に進出した」と一口に言っても、中身はまったく違います。自社ECで越境発送を始めただけの会社と、現地法人を作って店舗を出した会社では、投じたコストも背負ったリスクも桁が違う。この記事では、実際に使われている5つの入り方を比べます。
5つの型と、その決定的な違い
違いは規模ではなく、誰が在庫を持ち、誰が現地の顧客と接するかにあります。この2点で型が決まります。
| 型 | 在庫を持つ主体 | 顧客接点 | 初期投資 |
|---|---|---|---|
| 越境EC(自社) | 日本の自社 | 自社 | 小 |
| モール出店 | 自社または現地倉庫 | モール | 中 |
| 卸/代理店 | 現地の代理店 | 代理店 | 中 |
| セレクトショップ直取引 | 現地の小売 | 小売 | 小 |
| 現地法人 | 自社の現地法人 | 自社 | 大 |
越境EC — 検証には向くが、規模化には向かない
自社ECで海外発送に対応するだけなら、明日からでも始められます。市場が反応するかを確かめる手段としては最も安く、失うものが少ない。
ただし規模化は難しい。送料が高く、配送日数がかかり、返品対応が重い。単価が高く、軽く、リピートされる製品でなければ経済が成立しません。検証のための入り方と割り切るのが現実的です。
モール出店 — 需要は測れるが、価格が壊れやすい
アジア各国の主要ECモールへの出店は、需要の実測ができる点で優れています。検索数、閲覧数、カート投入率まで見えるため、市場の温度が数字で分かります。
一方で価格競争に巻き込まれやすく、いったん値引きすると戻せません。また並行輸入品が先に出品されていることも多く、自社が正規で出したときに価格の基準がすでに壊れている場合があります。
卸 — 最も一般的で、最も差がつく
現地の代理店に卸す型が、いまも最も一般的です。相手が在庫を持ち、配荷し、販促も担うため、自社の負担は軽くなります。
ただし成果は代理店の力量にほぼ依存します。同じ製品でも、代理店次第で結果が数倍変わる。この型を選ぶなら、代理店選定が事業そのものだと考えるべきです。契約時の独占権と最低発注量の設計が、その後数年を決めます。
セレクトショップと現地法人 — 両端の選択
セレクトショップへの直接卸は、ブランドの世界観を保ったまま小さく始められる型です。数量は出ませんが、ブランドの位置づけを守れるという利点があります。高価格帯や世界観を重視するブランドに向きます。
対して現地法人の設立は、最も投資が重く、最もコントロールが効く型です。数市場で実績を積んでから、主力市場に絞って設立するのが定石で、いきなり最初の一手に選ぶ理由はほとんどありません。
型は固定ではなく、移行するもの
実際に伸びているブランドは、型を段階的に移しています。越境ECで反応を見て、モールで需要を測り、数字を持って代理店と交渉し、主力市場で現地法人を作る。
- 越境EC/モールで需要を実測する(半年〜1年)
- 実測データを持って代理店候補と交渉する(交渉力が段違いになる)
- 代理店経由で配荷を広げる(1〜2年)
- 規模が見えた市場のみ、現地法人化を検討する
重要なのは、データを持って次の型に移ることです。実績のないまま代理店と交渉すると、条件は必ず不利になります。