代理店に依存せず、自社ECで直接海外の顧客に届ける。理想的に見えるこの型は、条件が揃えば非常に強く、揃わなければまったく機能しません。成立条件を先に確認することが重要です。
D2Cが成立する4つの条件
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 単価が高い | 国際送料を吸収できる価格でなければ経済が成立しない |
| 軽くて小さい | 容積重量が送料を決める。かさばる製品は不利 |
| リピートされる | 獲得コストを複数回の購入で回収する必要がある |
| 説明が要る | 棚で並ぶより、自社の言葉で語れる場のほうが有利 |
4つすべてを満たす製品は限られます。逆に言えば、満たす製品なら代理店より自社ECのほうが利益率が高い。化粧品の一部、サプリメント、こだわりの食品、工芸品などが該当しやすい領域です。
最大の壁は、集客
D2C海外展開の実質的な難所は、物流でも決済でもなく集客です。現地でまったく知られていないブランドのサイトに、どうやって人を連れてくるか。
- 広告:現地の広告プラットフォームで、現地語のクリエイティブが必要
- SNS:現地のプラットフォームで、現地の文脈での発信が必要
- インフルエンサー:現地で影響力のある人との関係構築が必要
- 検索:現地語のコンテンツを継続的に作る必要がある
いずれも継続的な運用が前提です。片手間では成立しないことを最初に理解しておく必要があります。
物流と決済の実務
集客の次に来るのが、届ける仕組みです。
- 決済:現地で使われている決済手段に対応する(クレジットカードだけでは不足する市場が多い)
- 送料:一定額以上で無料にするか、実費を明示するか。返品時の負担も決めておく
- 関税:受取人負担か元払いか。受取時に想定外の請求が来ると評価が大きく下がる
- 配送日数:正直に表示する。遅れることより、聞いていないことのほうが不満になる
規制上の位置づけを確認する
越境ECによる個人向け直送は、多くの市場で個人輸入として扱われ、製品登録が不要または簡易な場合があります。これがD2Cの大きな利点です。
ただし条件があります。数量が個人使用の範囲であること、現地に在庫を置かないこと、現地で広告して販売していると見なされないこと。規模が大きくなると、当局から商業輸入と判断される可能性があります。
D2Cで伸びた場合の次の段階として、正規登録への移行を計画に入れておくべきです。
D2Cと代理店は、両立できるか
結論から言えば、条件付きで両立できます。ただし設計が必要です。
- 価格を揃える(自社ECのほうが安いと、代理店は必ず反発する)
- 扱う製品を分ける(限定品・新製品は自社EC、定番は代理店)
- 地域を分ける(代理店の担当市場では直販を制限する)
- 役割を明示する(自社ECはブランドの窓口、代理店は配荷の主体)
重要なのは、代理店契約の締結前に決めて、条項に入れることです。後から自社ECを始めると、契約違反を主張されるリスクがあります。