「日本製だから売れる」という前提で海外に出て、思ったほど売れずに戻ってくる会社は少なくありません。日本ブランドが支持される理由は確かにありますが、その理由には賞味期限と適用範囲があります。
理由1:品質が安定している、という信頼
最も強い理由がこれです。ロットによるばらつきが少なく、書いてある通りの品質が出る。この信頼は、多くのアジア市場・中東市場で今も有効に機能しています。
ただし、これは比較優位であって絶対優位ではありません。韓国ブランドの品質管理はすでに同等以上の評価を得ている市場が多く、現地ブランドの品質も年々上がっています。「日本だから安心」だけで選ばれる状況は、カテゴリによってはすでに終わっています。
理由2:文化的なイメージの蓄積
アニメ、食、旅行、伝統工芸。長年の文化的接触によって、日本には説明不要のイメージが蓄積しています。丁寧、清潔、繊細、自然志向。これはマーケティングで一朝一夕に作れるものではなく、日本ブランドの実質的な資産です。
このイメージが最も効くのは、製品の機能では差がつきにくいカテゴリです。日用品、食品、雑貨など、性能で優劣をつけにくい領域ほど、イメージが購買理由になります。
理由3:特定領域での技術的な蓄積
素材、発酵、精密加工、機能性成分など、特定領域では実際の技術的優位が残っています。この優位は模倣に時間がかかるため、賞味期限が長い。
ただし条件があります。その優位を現地の言葉で説明できることです。日本国内では業界内の共通認識として通じる技術の価値が、海外では誰も知りません。説明しなければ、ただの高い製品になります。
優位が薄れている領域
正直に見ておくべき点として、次の領域では日本ブランドの優位は明確に縮小しています。
- トレンドの速さ:新製品の投入サイクルで韓国ブランドに大きく劣後する市場が多い
- SNSでの発信力:現地インフルエンサーとの連携の速さと量で差がついている
- 価格の柔軟性:現地生産のブランドに対して価格で勝てない
- 現地嗜好への適合:気候や肌質、味覚に合わせた現地専用品の開発量で劣る
まだ効く戦い方
以上を踏まえると、日本ブランドが取るべき位置は明確です。速さと価格で戦わず、信頼と説明で戦う。
- 製品の背景(原料、製法、開発の経緯)を、現地の言葉で具体的に語る
- トレンド追随ではなく、定番として長く使われる位置を狙う
- 価格は下げず、価値の説明に投資する
- 訪日経験者や在留邦人といった、すでに文脈を理解している層から始める
「日本製だから」で始めて、「この製品だから」で終わる。ここまで持っていけたブランドが、結果として長く残っています。