海外展開の失敗は、たいてい「売れなかった」と総括されます。しかし詳しく見ると、売れる前の段階で構造的に詰んでいたケースが大半です。製品力の問題であることは、実は少ない。
型1:価格が最初から成立していなかった
最も多い型です。日本の価格に諸費用を積み上げた結果、現地の棚では明らかに高い価格になっていた。それでも「品質が違うから」と押し切って出し、動かなかった。
この型の厄介なところは、出す前に分かっていたはずだという点です。現地の棚を見て、競合の価格を確認していれば、出す前に判断できました。
型2:代理店が動かないまま契約期間が終わった
独占権を与えたが、代理店が実質的に何もしなかった。契約期間中は他の代理店と組めず、市場が完全に止まったまま数年が過ぎた。
この型は契約設計で完全に防げます。最低購入量の設定、期間の短縮、未達時の独占解除条項。いずれも交渉時に入れられる条件です。
型3:規制で止まり、そのまま計画が消滅した
代理店を決め、価格を合意し、初回発注の直前で「この成分は使えない」と判明。処方変更には半年かかると分かり、社内の熱が冷めてプロジェクトが立ち消えになった。
これは順序の問題です。規制の確認は、市場選定と同時に行うべき工程であり、代理店交渉の後に回してはいけません。
型4:担当者が異動して、誰も引き継げなかった
海外展開を一人で担当していた社員が異動した。後任は経緯を知らず、代理店との関係も引き継げず、やりとりが止まった。1年後、契約更新の連絡が来て初めて状況を把握した。
海外展開は年単位のプロジェクトで、担当者交代は避けられません。にもかかわらず、情報が個人のメールボックスと頭の中にしかない体制が非常に多い。
- なぜその市場を選んだかの理由が残っていない
- 契約条件の交渉経緯が分からない
- 現地パートナーとの関係が個人に紐づいている
- 登録名義や更新期限を誰も把握していない
型5:出した後、誰も数字を見ていなかった
出荷までは全社の関心事だったが、出した後は代理店任せ。数字は年に一度しか見ておらず、売れていないことに気づいたのは1年後だった。その時点で在庫は古く、店頭からはすでに外されていた。
参入後のフェーズに担当も予算も割り当てられていないことが原因です。出すことがゴールになっている計画は、この型に必ず陥ります。
5つに共通する構造
5つの型を並べると、共通点が見えます。いずれも製品の問題ではなく、設計と運用の問題です。
- 出す前に確認すべきこと(価格、規制)を、出す直前まで確認していない
- 契約に、うまくいかなかった場合の出口を書いていない
- 情報が組織ではなく個人に溜まっている
- 出した後の運用が計画に含まれていない
いずれも、実務の量が足りていないことに起因します。時間があれば確認できたこと、記録できたこと、追えたことばかりです。