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ブランド事例 ブランディングローカライズ

ブランドストーリーは翻訳では伝わらない

日本語で機能しているブランドの物語が、なぜ海外では響かないのか。物語を現地向けに組み直す理由と手順を示します。

No. 023/2026.03.26/4 min read

海外向けのブランドサイトを作るとき、多くの会社は日本語のコピーを翻訳します。文法的には正しい英語や中国語ができあがりますが、ほとんど何も伝わっていないことが多い。理由は言語ではなく、前提の共有度にあります。

日本語のコピーは、省略でできている

日本のブランドコピーは、多くを語りません。「職人の手仕事」「一〇〇年続く」「素材にこだわる」。これらは日本の消費者には十分に伝わりますが、背後にある文脈を共有しているから成立している表現です。

海外の消費者はその文脈を持ちません。「職人の手仕事」と言われても、それが何を意味し、なぜ価値があるのかが分からない。翻訳しても伝わらないのは当然です。

抽象を、具体に置き換える

解決策は単純です。抽象的な価値を、検証可能な具体に置き換える。

日本語の表現海外向けの再構築
素材にこだわるどの産地の、どの素材を、なぜ選んでいるか
職人の手仕事工程のうちどこが手作業で、それにより何が変わるのか
一〇〇年の伝統いつ創業し、何を変えず、何を変えてきたか
安心・安全どの基準を満たし、どの検査を通しているか
丁寧に作る一日あたりの生産量と、その理由

具体は翻訳しても失われません。数字と固有名詞は、どの言語でも同じ意味を持ちます。

何を語らないかを決める

同時に、日本では価値になるが海外では意味を持たない要素もあります。

  • 日本国内での受賞歴(現地で知られていない賞は価値を持たない)
  • 有名人の起用(現地で知られていなければ意味がない)
  • 日本国内での販売実績(規模の感覚が共有されない)
  • 業界内での評価(一般消費者には届かない)

限られたスペースにこれらを載せると、本当に伝えるべきことが薄まります。削る判断のほうが重要です。

現地で意味を持つ文脈に接続する

再構築の最後の工程が、現地の関心事への接続です。同じ製品でも、市場によって刺さる文脈が違います。

  • 気候:高温多湿の市場と乾燥した市場では、求められる機能が違う
  • 宗教・文化:成分の由来や使用場面への配慮が必要な市場がある
  • 生活習慣:入浴、食事、スキンケアのルーティンが異なる
  • 社会的関心:環境配慮、動物実験、原料のトレーサビリティへの感度が市場ごとに違う
設計の視点日本で「無香料」が価値になる市場もあれば、香りが選択理由の中心になる市場もあります。製品の同じ特徴が、市場によって長所にも短所にもなることを前提に組み直してください。

手順としてまとめる

  1. 日本語のコピーから、抽象的な表現をすべて洗い出す
  2. それぞれについて「具体的には何か」を社内で言語化する(ここが最も時間がかかる)
  3. 現地で意味を持たない要素を削る
  4. 現地の気候・習慣・関心に接続する文脈を足す
  5. そのうえで翻訳する(ネイティブによる確認を必ず入れる)

2番目の工程を飛ばすと、どれだけ良い翻訳者を使っても結果は変わりません。翻訳の前に、日本語で具体化することが本体です。

本記事は公開情報をもとに、日本ブランドの海外展開の「型」をまとめたものです。個別企業の最新の事業状況・数値は、各社の公式発表をご確認ください。

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