GCC市場への参入は、ほとんどの場合UAEから始まります。制度が比較的明確で、手続きの見通しが立てやすいためです。ただし自社だけでは完結しない構造になっている点は、最初に理解しておく必要があります。
前提:輸入者がいないと始まらない
UAEでの製品登録は、現地にライセンスを持つ輸入者・販売者が申請主体になります。日本のメーカーが直接申請することはできません。
つまり順序としては、代理店(または現地の輸入パートナー)を決めることが登録の前提条件になります。「登録を済ませてから代理店を探す」という順序は成立しません。
手続きの全体の流れ
- 現地の輸入者・販売者を決める(事業者ライセンスの保有を確認)
- 製品のカテゴリ分類を確定する(化粧品か、それ以外の区分か)
- 成分の適合性を確認する(使用禁止・制限成分、上限値)
- 必要書類を揃える(自由販売証明書、成分表、GMP証明、ラベル案など)
- 輸入者名義で当局に製品登録を申請する
- 審査・追加資料への対応
- 登録完了後、輸入・通関・販売開始
各ステップで差し戻しが発生しうるため、実際の所要期間は書類の完成度で大きく変わります。書類が完璧なら短く、不備があれば往復のたびに数週間が加算されます。
成分で引っかかりやすい項目
UAEを含むGCC市場で、日本製品が引っかかりやすいのは次の領域です。
- エタノール:使用の可否と、由来の説明が問われる場合がある
- 動物由来成分:ゼラチン、コラーゲン、動物性油脂などの由来証明
- 紫外線吸収剤:使用可能な種類と配合上限
- 特定の防腐剤:配合上限が日本と異なる場合がある
- 効能を示唆する成分:化粧品の範囲を超えると別区分になる
いずれも成分表だけでなく原料の由来まで遡って確認が必要になることがあります。原料メーカーからの証明取得に時間がかかるため、早期の着手が要ります。
ラベルの要件
UAE市場向けのパッケージには、アラビア語表示が求められます。単なる翻訳ではなく、表示すべき項目が指定されています。
- 製品名と用途
- 全成分表示
- 内容量
- 製造者名と所在地、輸入者名と所在地
- 製造年月日または使用期限、開封後使用期間
- 使用上の注意
- バッチ番号
実務上は、日本語・英語のパッケージにアラビア語ステッカーを貼付する方法が広く使われています。ただしステッカーで隠してよい情報とそうでない情報があるため、貼付位置の設計が必要です。
詰まりやすい3か所
| 詰まる箇所 | 原因 | 先に打てる手 |
|---|---|---|
| 自由販売証明書 | 取得に時間がかかる。記載内容が要件と合わない | 市場決定と同時に申請する。要件を先に確認する |
| 成分の由来証明 | 原料メーカーからの取得に時間がかかる | 成分表の確認時点で、由来証明の必要性を判定する |
| アラビア語ラベル | 訳語が規制上の用語と一致しない | 現地の登録代行者に事前確認する |
いずれも「後で対応すればよい」と思われがちですが、実際にはここでの遅れがリードタイム全体を決めます。
UAEの登録を、次の市場に活かす
UAEで揃えた書類の多くは、他のGCC諸国でも同じものが求められます。成分表、自由販売証明書、GMP証明、安全性データ。一度揃えれば、横展開のコストは大きく下がります。
ただし国ごとの追加要件は必ずあります。とくにサウジアラビアは要件が厳格で、UAEで登録できたものがそのまま登録できるとは限りません。UAEを型作りに使い、各国の差分だけを確認する進め方が効率的です。