海外展開のプロジェクトは、出荷までは全社の関心事です。しかし出した後、数字を誰も見ていない状態に陥る企業が非常に多い。これは怠慢ではなく、構造的な問題です。
なぜ見えなくなるのか
- データの形式がばらばら:モール、代理店、自社ECで粒度も通貨も期間も違う
- 出荷ベースと販売ベースが混在:代理店への出荷は分かるが、店頭での販売は分からない
- 報告の頻度が低い:月次、四半期、あるいは年次でしか届かない
- 担当と予算が割り当てられていない:参入後のフェーズが計画に含まれていない
最後の項目が根本原因です。「出すこと」がゴールになっている計画では、出した後の運用が誰の仕事にもなりません。
最初に見るべき3つの数字
完璧なデータ統合を待つ必要はありません。最初は3つだけで十分です。
| 指標 | 見方 | 意味 |
|---|---|---|
| リピート発注 | 2回目、3回目の発注が来ているか | 店頭で動いているかの最も明確なサイン |
| 代理店の在庫 | 出荷したものが、どれだけ残っているか | 出荷と販売の乖離が見える |
| 配荷店舗数 | 何店舗に置かれているか、増えているか | 小売が採用しているかが分かる |
レビューは最速の情報源
数字より早く状況を教えてくれるのが、現地ECのレビューです。発売から数週間で、次のことが分かります。
- 製品のどこが評価されているか
- どこに不満があるか(品質、価格、配送、説明)
- 想定と違う使われ方をしていないか
- 競合と比べてどう見られているか
現地語なので読まれないことが多いのですが、ここに製品改善のすべてのヒントがあります。翻訳して分類し、次の一手に繋げる工程を運用に組み込むべきです。
報告を、契約に書いておく
数字が届かない最大の理由は、報告義務が契約に書かれていないことです。
- 報告の頻度(月次を推奨)
- 報告内容(出荷数、販売数、在庫数、配荷店舗リスト)
- 報告の形式(項目を指定しておく)
- 未報告の場合の措置
契約時に入れれば合意を得やすい条項です。後から要求すると、疑っているように受け取られます。最初に入れるべきです。
見えないことのコスト
数字が見えない状態を放置すると、次のことが起きます。
- 手が打てない(何を直せばいいか分からない)
- 次の市場の判断ができない(何が成功要因か分からない)
- 代理店との交渉で不利になる(相手のほうが情報を持っている)
- 社内で継続の説明ができない(予算が付かなくなる)
最後の項目が致命的です。数字が示せないと、海外展開の予算は真っ先に削られます。数字を持つことは、プロジェクトを守ることでもあります。