13市場を並べると、ある傾向が見えます。市場が大きいほど、参入の手続きが重い。この相関は偶然ではなく、市場を守る仕組みが働いている結果です。このトレードオフをどう解くかが、市場選定の本質です。
相関の構造
| 市場の性格 | 規模 | 手続きの重さ | 代表例 |
|---|---|---|---|
| ハブ型・自由港型 | 小 | 軽い | 香港、シンガポール |
| 先進・成熟型 | 中 | 中 | 台湾、UAE |
| 成長・大規模型 | 大 | 重い | インドネシア、サウジアラビア |
手続きが軽い市場は、多くの場合自国産業の保護より貿易の自由度を優先しています。逆に大きな市場は、自国産業と消費者を守る仕組みを持ちます。
「軽い市場から入る」の落とし穴
手続きが軽い市場から入るのは合理的に見えます。実際、検証としては優れています。ただし落とし穴があります。
- 書類の型が作れない:登録が不要なため、次の市場で一から準備することになる
- 価格構造が特殊:関税がない市場の価格は、他市場に応用できない
- 消費者が特殊:購買力が高く、一般化しにくい
- 規模が出ない:事業として成立させるには、結局重い市場が必要
「大きい市場から入る」の落とし穴
逆に、最初から最大市場を狙う場合の問題も明確です。
- 登録期間中の売上がゼロ:数か月〜1年、資金だけが出ていく
- 社内の熱が冷める:成果が見えない期間が長く、プロジェクトが漂流する
- 失敗のコストが大きい:投じた準備がすべて無駄になる
- 学習機会がない:一発勝負になり、試行錯誤ができない
推奨する解き方
実務的な解は、軽い市場で走りながら、重い市場の準備を進める並行戦略です。
- 手続きが軽い市場(香港、シンガポール、台湾)で市場投入し、反応を測る
- 同時に、重い市場向けの書類を揃え始める(自由販売証明書、GMP証明、成分表の整備)
- 軽い市場での実績を、重い市場のパートナー交渉に使う
- 書類が揃った段階で、重い市場の登録に着手する
- 登録期間中も、軽い市場の売上でプロジェクトを維持する
この設計の要点は、登録期間中に売上ゼロの状態を作らないことです。プロジェクトが漂流する最大の原因を、構造的に防げます。
リソースが限られる場合
並行戦略は理想ですが、担当者が一人しかいない場合は難しい。その場合の優先順位は次の通りです。
- 書類の準備を最優先する:自由販売証明書とGMP証明は、どの市場でも要る
- 成分スクリーニングを13市場で一度に行う:市場ごとにやるより効率的
- 1市場に絞って深く進める:複数市場を薄く進めるより結果が出る
最初の2つは、どの市場を選んでも無駄にならない投資です。市場が決まらないうちから着手できます。