海外展開の体制づくりで、「専任を置くべきか」という議論がよく起きます。しかし本当の論点は人数ではなく、どの工程を自社で持ち、どれを外に出すかです。
工程を、3つに分ける
| 分類 | 工程 | 理由 |
|---|---|---|
| 必ず自社で持つ | 市場の選択、価格の決定、契約の判断、パートナーとの関係 | 事業の根幹。外に出すと主導権を失う |
| 外に出してよい | 情報収集、書類作成、登録申請の実務、翻訳、物流手配 | 専門性が明確で、成果物が定義できる |
| どちらでもよい | 市場調査の一部、競合分析、レビュー分析 | 規模と頻度による |
1行目を外に出すと、海外展開は自社の事業でなくなります。ここだけは死守すべき領域です。
専任を置く判断
専任を置くべきかどうかの基準は、次の通りです。
- 置くべき:3市場以上に展開する/海外売上比率の目標がある/製品ラインが多い/参入後の運用が本格化している
- 兼務でもよい:1市場のみ/実験段階/外部に工程を出せている
兼務が成立する条件兼務で回す場合、「調べる・まとめる・追う」を外に出せているかが成否を分けます。これを兼務者が抱えたままだと、必ず漂流します。
外部の選択肢と、それぞれの守備範囲
| 相手 | 得意な領域 | 注意点 |
|---|---|---|
| コンサルティング会社 | 戦略設計、市場調査、社内説得の材料作り | 実務は伴走しない。費用が高い |
| 現地の登録代行会社 | 製品登録の実務、規制の解釈 | 市場ごとに契約が必要 |
| 商社 | 物流、与信、既存の流通網 | マージンが乗る。情報が蓄積しない |
| 翻訳・制作会社 | 現地語対応、商品ページ制作 | 規制の知識がない場合がある |
| 公的支援機関 | 基礎情報、商談機会、費用補助 | 個別の実務は担当しない |
| AIエージェント | 調査、整理、進捗追跡、規制の一次判定 | 最終確認と判断は人が行う |
組み合わせの設計
現実的な体制は、次のような組み合わせになります。
- 判断:事業責任者(社内・必ず)
- 実務の推進:担当者1名(兼務可)
- 調査・整理・追跡:AIエージェントまたは外部委託
- 規制の最終確認:現地の登録代行会社
- 法務:弁護士(契約時のみ)
- 物流:フォワーダー
この構成なら、社内は実質1.5人分で1〜2市場を回せます。重要なのは、担当者が調査に埋もれないことです。
外部に出しても、知識は自社に残す
外部に工程を出すときに最も注意すべきは、成果物だけでなく過程も受け取ることです。
- なぜその結論になったのかの根拠を求める
- 判断に使った情報源の共有を求める
- 成果物を自社の形式で保管する
- 次回は自社でできるようになる部分を意識する
結論だけを受け取っていると、外部への依存が固定化します。3年後も同じ費用を払い続けることになります。