海外の販売パートナーは、たいてい「展示会で会った会社」か「知人の紹介」で決まります。それが悪いわけではありませんが、比較対象がない状態で決めていることは自覚しておくべきです。
候補が1社しかない交渉は、交渉ではない
代理店選びの失敗の多くは、相手の質ではなく候補が1社しかなかったことに起因します。比較対象がないので、提示された条件が妥当かどうかが分かりません。独占権を求められても断る理由がなく、最低発注量が緩くても厳しくても判断できない。
候補が3社あれば、条件は自然に相場に近づきます。パートナー開拓エージェントの第一の役割は、比較できる状態を作ることです。
候補の洗い出しで見る5点
候補企業は、規模や知名度ではなく、自社製品との噛み合わせで評価します。
- 取り扱いカテゴリ:自社製品と同じ棚に並ぶ商材を扱っているか
- 既存取引ブランド:どの価格帯のブランドを扱っているか。自社が浮かないか
- チャネル:モール中心か、実店舗への配荷力があるか、両方か
- 規模感:自社の想定ロットに対して大きすぎないか、小さすぎないか
- 登録の実務能力:現地での製品登録を代行できるか、経験があるか
条件は横並びにしないと評価できない
候補と接触が始まると、条件が個別に飛んできます。A社は独占権とセットで大きめの最低発注量、B社は非独占だが単価が厳しい、C社はマーケティング費用の負担を求めてくる。これを頭の中で比べるのは無理です。
エージェントは、提示条件を同じ項目で並べた比較表に整理します。
| 比較項目 | 確認すること |
|---|---|
| 独占権 | 範囲(国/チャネル/カテゴリ)、期間、解除条件 |
| 最低発注量 | 初回・年間の数量、未達時の扱い |
| 価格条件 | 卸価格、値引き条件、価格改定の可否 |
| 支払条件 | 前払/後払、サイト、通貨、為替リスクの負担 |
| 販促負担 | 広告費、店頭什器、サンプル、販売員の費用分担 |
| 登録名義 | 製品登録を誰の名義で取るか、契約終了時にどうなるか |
登録名義は、後で効いてくる
契約時に軽く扱われがちで、後から最も重くのしかかるのが製品登録の名義です。代理店名義で登録すると、契約を切ったときに登録がそのまま相手に残り、新しい代理店で一から取り直しになることがあります。
市場によっては自社名義での登録が制度上できない場合もあります。できない場合でも、契約書に契約終了時の登録移管条項を入れておくかどうかで、数年後の自由度がまったく変わります。
やりとりを個人のメールボックスから出す
パートナー開拓の記録は、担当者のメールボックスに溜まります。担当者が異動すると、なぜその条件で合意したのかという経緯が失われ、次の担当者は交渉の背景を知らないまま契約更新を迎えます。
エージェントは、接触から条件提示までの経緯を案件単位で記録します。組織に残る形にしておくことが、海外展開を属人化させないための最低条件です。