海外に出した後、多くの会社で起きるのは「数字が見えない」という事態です。モールの管理画面、代理店から月次で届くエクセル、自社ECの管理画面。形式も粒度も更新頻度も違う数字が別々の場所にあり、全体像が誰にも見えていません。
見えないのではなく、繋がっていない
数字がないわけではありません。モールには日次のデータがあり、代理店からも報告は来ています。問題は、それらが繋がっていないことです。SKUの表記が違う、通貨が違う、集計期間が違う、代理店の報告は出荷ベースで販売ベースではない。
この不揃いを人力で毎月揃えるのは現実的ではありません。結果として、統合された数字を見るのは年に一度の予算会議のときだけになります。
まず、比較できる単位に揃える
運用・分析エージェントの最初の仕事は、分析ではなく名寄せです。
- SKUの対応づけ(現地の型番と自社品番を紐づける)
- 通貨の統一と、為替レートの適用ルールの固定
- 出荷ベースと販売ベースの区別(代理店在庫を可視化する)
- 期間の統一(現地の会計期間や祝祭日の影響を補正する)
現地語レビューを読み解く
海外での評価を最も早く教えてくれるのは、現地ECのレビューです。しかし言語の壁で、実際には読まれていないことがほとんどです。翻訳すれば読めますが、数百件を毎月読む時間は誰にもありません。
エージェントはレビューを収集し、内容を分類します。
| 分類 | 典型的な内容 | 次の一手 |
|---|---|---|
| 品質・使用感 | 効果、テクスチャー、香り、耐久性 | 処方・仕様の改善、訴求の修正 |
| 価格 | 高い/安い、他ブランドとの比較 | 価格改定、容量違いの投入 |
| 配送・梱包 | 到着の遅さ、破損、箱の状態 | 物流パートナーの見直し、梱包仕様の変更 |
| 表示・説明 | 使い方が分からない、成分表示が読めない | 現地語の同梱物、商品ページの改善 |
「配送が遅い」という不満が売上停滞の主因だった、というケースは珍しくありません。製品の問題だと思い込んで処方を見直していると、原因にたどり着けません。
次の一手を、データから出す
統合された数字とレビューが揃うと、次にやることが具体的になります。エージェントは改善候補を洗い出し、影響の大きさと実行の重さで並べます。
- 効いている訴求を特定し、他市場の商品ページに展開する
- 不満が集中している点(配送、表示、容量)を潰す
- 売れているSKUに在庫を寄せ、売れていないSKUの投入を止める
- 価格と評価の関係から、値付けの調整余地を判断する
次の市場は、今の市場のデータが教えてくれる
横展開の判断で最も確度が高い材料は、外部の市場調査ではなくすでに売っている市場の実データです。どの層に、どの理由で買われているかが分かっていれば、同じ構造を持つ市場を探せます。
台湾で支持されている理由が「日本製の信頼」なのか「特定成分」なのか「価格の手頃さ」なのかで、次に狙うべき市場は変わります。運用・分析エージェントの出力は、そのまま市場調査エージェントの入力になります。