海外展開のスピードを落としている見えにくい原因が、工程間の情報の断絶です。市場調査で分かったことが規制判定で使われず、規制判定の結果が価格設計に反映されない。同じことを何度も調べ直しています。
断絶は、担当が変わるところで起きる
情報が失われるのは、いつも担当が変わる境目です。市場調査は企画部門、規制対応は品質保証部門、契約は法務、物流は物流部門。それぞれが自分の担当範囲だけを見て、前工程の文脈は引き継がれません。
結果として、品質保証部門は「なぜこの市場なのか」を知らないまま規制を調べ、法務は「なぜこの代理店なのか」を知らないまま契約書を見ます。判断の質は、文脈がないぶん確実に落ちます。
同じ製品情報を何度も入力しない
もっと単純な問題もあります。同じ情報の再入力です。成分表は市場調査でも規制判定でも登録申請でも使いますが、多くの現場では都度ファイルを探し、都度貼り直しています。
Tempura OS では、製品・市場・パートナーの情報を一度登録すれば、5つのエージェントすべてがそれを参照します。
| 情報 | 登録する場面 | 使われる場面 |
|---|---|---|
| 成分表・処方 | 初回登録 | 規制判定、登録申請、レビュー分析、AI検索向けの製品情報の整備 |
| 想定小売価格 | 市場調査 | 価格設計、代理店条件の評価 |
| 狙う市場と理由 | 市場選定 | 規制判定の優先順位、パートナー選定基準 |
| 契約条件 | パートナー開拓 | 価格設計、運用の在庫計画 |
| 販売実績 | 参入後 | 横展開の市場選定、次期の在庫計画 |
判断の理由まで引き継ぐ
引き継ぐべきは数値だけではありません。なぜそう決めたかが最も重要な情報です。
「マレーシアを優先する」という決定だけを引き継ぐと、次の担当者は前提が変わったときに判断できません。「マレーシアを優先したのは、規制難易度が低く、既存の代理店候補が2社あり、価格が成立したから」まで残っていれば、代理店候補が消えたときに優先順位を見直す判断ができます。
フィードバックが逆流する
引き継ぎは前から後ろだけではありません。参入後に分かったことは、前の工程に戻して使うべきです。
- 実際の関税・輸送費が判明したら、他市場の価格設計の前提を更新する
- 登録にかかった実期間が分かったら、次の市場の計画期間に反映する
- レビューで分かった支持理由を、次の市場選定の軸に加える
- 代理店との交渉で相場が分かったら、他市場の条件評価の基準にする
1市場目の経験が2市場目に効くかどうかで、横展開の速度は数倍変わります。それを個人の経験ではなくデータとして残すのが、この設計の目的です。
属人化を、仕組みで防ぐ
海外展開は属人化しやすい業務の代表です。担当者の頭の中に地図があり、その人がいないと何も進まない。本人にとっても、他の仕事に移れないという負担になります。
工程間でデータが繋がっていれば、担当者はプロジェクトの現在地をいつでも確認でき、引き継ぎは資料を作らなくても成立します。属人化は気合ではなく、構造で解くものです。