海外展開の第一歩は市場調査ですが、ここで数か月を失う会社が非常に多い。原因は情報が足りないことではなく、比較の型が決まっていないことです。市場調査エージェントは、比較の型を先に固定することで調査を有限にします。
調査が終わらない理由は、終了条件がないから
「アジア市場を調べておいて」と言われた担当者は、まず市場規模を調べ、次に競合を調べ、消費者トレンドを調べ、規制を調べ……と広げていきます。どこまで調べれば十分かの基準がないので、調査は自然には終わりません。
そして集まった情報は、市場ごとに粒度がばらばらになります。台湾は競合が詳しいが規制が浅い、UAEは規制が詳しいが競合が分からない。この状態では比較ができず、結局担当者の印象で市場が決まります。
比較の型を4軸に固定する
市場調査エージェントは、13市場すべてを同じ4軸で埋めます。軸を固定するので、どの市場も同じ粒度で揃い、比較が成立します。
| 軸 | 見るもの | 判断への効き方 |
|---|---|---|
| 需要 | カテゴリの伸び、日本製への支持、購買層の厚み | 売れる可能性の上限を決める |
| 競合 | 価格帯、すでに入っている日本ブランド、現地ブランドの強さ | 自社が取れる位置を決める |
| 規制 | 登録要否、成分制限、表示要件、取得期間 | 参入までの時間を決める |
| コスト | 関税、輸送、代理店マージン、登録費用 | 価格の成立可否を決める |
自社製品との相性を加味する
市場が魅力的でも、自社製品が合わなければ意味がありません。エージェントは、日本国内での売れ方を入力として受け取り、その売れ方が成立する市場かどうかを評価します。
- 価格帯:現地の可処分所得とカテゴリ相場に対して、想定小売価格が成立するか
- 訴求軸:国内で効いている訴求(成分、産地、機能、世界観)が現地で通用するか
- 使用習慣:製品の使われ方が現地の生活習慣に合うか
- 規格:容量、電圧、サイズ、パッケージが現地の標準に合うか
国内で「無添加」「国産原料」で売れている製品が、その訴求が制度上表示できない市場ではまったく別の売り方になる、といったズレをこの段階で発見します。
出力される比較表の使い方
最終的に出てくるのは、13市場を4軸で評価した比較表と、上位3〜5市場についての詳細です。この表は「答え」ではなく、社内で議論するための共通の土台として使うものです。
実際の使われ方として多いのは、経営会議で「なぜこの市場なのか」を説明する材料としてです。担当者の印象ではなく同一基準の比較として提示できるため、意思決定が速くなります。
調査の価値は情報量ではなく、意思決定を前に進めた度合いで測るべきです。
調査を止めて、次に進む判断
市場調査エージェントの終了条件は、進出先が1〜2に絞れたことです。この時点で残っている不確実性は、机上の調査では解けません。代理店に会う、サンプルを送る、テスト販売する、といった実地の行動でしか埋まらない情報です。
調査を続けたくなる気持ちは、たいてい「決めたくない」ことの裏返しです。4軸が埋まって上位が見えたら、次のフェーズに進む判断をしてください。