海外展開のプロジェクトで最も頻繁に起きる停滞は、誰が決めるのかが決まっていないことによるものです。情報は揃っているのに、決定だけが先送りされる。
判断事項を洗い出す
まず、海外展開で発生する判断を列挙します。
| 判断事項 | タイミング | 影響の大きさ |
|---|---|---|
| どの市場に参入するか | 参入準備 | 大 |
| 処方変更に投資するか | 参入準備 | 大 |
| 価格をいくらにするか | 参入準備 | 大 |
| どのパートナーと組むか | 参入直前 | 大 |
| 契約条件を受け入れるか | 参入直前 | 大 |
| 初回発注数量 | 参入直前 | 中 |
| 販促にいくら使うか | 参入後 | 中 |
| 続けるか、止めるか | 参入後 | 大 |
「大」の判断は、担当者レベルでは決められません。ここに承認プロセスが必要です。
責任者を1人にする
海外展開の意思決定で最も重要なのは、最終的に決める人を1人にすることです。
複数部門の合議にすると、誰も責任を持たず、判断が先送りされます。とくに海外展開は不確実性が高いため、合議では「もう少し情報を集めてから」という結論になりがちです。
責任者に必要な権限
責任者を置くなら、次の権限が伴っている必要があります。
- 一定金額までの予算執行権
- 市場選定と、パートナー選定の決定権
- 価格の決定権(または、事前に承認された価格帯の範囲での裁量)
- 契約条件の合意権(法務レビューを経た上で)
- 撤退の提案権
権限のない責任者は、単なる連絡係になります。すべてを上に上げることになり、判断速度は改善しません。
速さが交渉力になる
海外のパートナーとの交渉で、決定の速さは直接的な武器になります。
- 条件提示への返答が速いと、相手の熱量が維持される
- 意思決定の速い相手だと分かると、優先度が上がる
- 「本社に確認します」を繰り返すと、相手の信頼が下がる
- 商機のタイミングを逃さない(商戦期、展示会、棚替え)
海外のパートナーが最も嫌うのは、条件が厳しいことではなく、返事が遅いことです。
判断の記録を残す
責任者を決めることには、副次的な効果があります。判断の記録が残ることです。
誰が、いつ、何を根拠に決めたか。これが残っていると、状況が変わったときに前提を見直せます。合議で曖昧に決まったことは、記録も曖昧になり、後から検証できません。
担当者が交代しても、判断の履歴が残っていれば引き継ぎが成立します。