海外展開の実務には、間違えると取り返しがつかない判断が含まれます。規制の解釈、契約の条件、価格の設定。だからこそ、どこまでを自動で進め、どこで必ず人に戻すかを先に決めておく必要があります。
自動化してよい工程と、してはいけない工程
判断の基準はシンプルです。間違いが後から直せるかどうか。直せるものは自動で進め、直せないものは必ず人に戻します。
| 工程 | 扱い | 理由 |
|---|---|---|
| 情報収集・整理 | 自動 | 間違いは次の確認で直せる |
| 規制の一次スクリーニング | 自動+専門家確認 | 判定ミスの影響が大きい |
| 書類の下書き作成 | 自動 | 提出前に人が確認する |
| 申請の提出 | 人 | 取り下げにコストがかかる |
| 契約条件の合意 | 人 | 後から変更できない |
| 価格の決定 | 人 | 一度出した価格は下げにくい |
社外に出す成果物は必ず人が承認する
Tempura OS の設計原則のひとつが、社外に出る行為は人の承認を経ることです。当局への提出、代理店への条件提示、契約書の締結。これらはエージェントが下書きを作り、人が確認して初めて出ます。
一方で、社内で完結する情報収集・整理・分析は自動で進みます。ここに承認を挟むと、そもそもの目的である往復の削減が失われます。
判定には、根拠と確度を添える
エージェントの出力を鵜呑みにさせない仕組みも必要です。規制判定や市場評価には、必ず根拠と確度をセットで返します。
- 何を根拠にした判定か(規制区分、公開情報、過去案件のパターン)
- 確度はどの程度か(明確に規定されている/運用に依存する/情報が古い可能性)
- 確認すべき相手は誰か(現地代理人、登録代行者、当局)
確度が低い項目が明示されていれば、人はそこだけを集中して確認できます。すべてを疑うより、疑うべき場所が分かっているほうが速い。
記録が残ることが、ガバナンスになる
エージェントが進めた工程は、すべて記録として残ります。いつ、何を根拠に、どう判断したか。これは効率のためだけでなく、後から検証できる状態を保つためでもあります。
海外展開は数年がかりのプロジェクトで、その間に担当者は替わります。前任者がなぜその市場を選び、なぜその条件で契約したのかが分からないまま引き継ぐのは、組織にとって大きな損失です。
任せる範囲は、あとから広げればいい
導入時に全工程を任せる必要はありません。最初は情報収集と整理だけを任せ、出力の質を確認してから範囲を広げるのが現実的です。
実際に多いのは、市場調査から始めて、精度に納得したら規制判定に広げるという入り方です。信頼は使ってからついてくるもので、最初から前提にする必要はありません。