海外展開の予算が組めない最大の理由は、何にいくらかかるか分からないことです。費目を洗い出せば、少なくとも見積もりは立ちます。
費目を6つに分ける
| 費目 | 内容 | 発生時期 |
|---|---|---|
| 調査・準備 | 市場調査、規制確認、証明書取得 | 参入準備 |
| 登録・認証 | 製品登録費用、認証取得費用、代行手数料 | 参入直前 |
| 製品対応 | 処方変更、パッケージ制作、ラベル制作 | 参入直前 |
| 初期在庫 | 初回生産分の製造原価 | 参入直前 |
| 販促 | 広告、店頭什器、サンプル、イベント | 参入後 |
| 運営 | 渡航費、通訳、現地対応、更新費用 | 継続 |
最後の「運営」が予算に入っていないケースが非常に多い。継続的に発生するため、単年度予算では見落とされます。
見落とされやすいコスト
- 証明書の取得と認証:公証、領事認証、翻訳の費用
- 登録の更新費用:数年ごとに発生する
- ラベルのステッカー貼付:数量に比例して積み上がる作業費
- サンプルの送付費用:交渉段階で意外に嵩む
- 渡航費:年数回の現地訪問。担当者の時間コストも含む
- 為替差損:受取通貨によっては無視できない
- 返品・廃棄:売れなかった在庫の処理費用
費用が発生する順序
予算の設計で重要なのは、金額より発生の順序です。
- 調査・準備の費用は、市場が決まる前から発生する
- 登録費用は、代理店が決まってから発生する
- 初期在庫は、登録完了後に発生する
- 売上は、初回出荷の数か月後から立ち始める
- 販促費は、売上が立ち始めた後も継続的に必要
費用が先に出て、売上は最後という構造です。この期間をどう耐えるかが、資金計画の中心になります。
回収の考え方
1市場目で投資を回収しようとすると、無理な計画になります。現実的な考え方は次の通りです。
- 1市場目:投資。回収は期待しない。型を作ることが成果
- 2市場目:準備費用が大幅に下がる。ここから回収が始まる
- 3市場目以降:限界費用が低く、利益が出やすい
複数市場を前提とした回収計画を最初に描くべきです。1市場だけで採算を判断すると、ほぼすべての海外展開が「割に合わない」という結論になります。
予算の上限を決めておく
予算計画で最も重要なのは、金額の精度ではなく上限を決めることです。
「ここまで投じて結果が出なければ止める」という上限が決まっていれば、途中で判断ができます。上限がないと、投じた分を回収したいという心理が働き、撤退が遅れます。
いくら使うかより、いくらまでなら失ってよいかを先に決める。